個人事業主と法人の責任の違いとは?
「開業したいけれど、個人事業にするべきか会社を作るべきか…」
そんなふうに迷っている方に向けて、今回は“責任の重さ”という視点から、個人事業主と法人の違いをやさしく解説していきます。
特によく耳にする「無限責任」と「有限責任」の違いについて、できるだけわかりやすくまとめました。
無限責任とは?|個人事業主の立場
個人事業主は「無限責任」を負う立場になります。
つまり、事業で借金をしたり、損害を出したりした場合、それを“自分自身の財産”ですべて責任を負うということです。
たとえば:
- 借入金の返済ができなくなった
- 取引先に損害を与えてしまった
こんなときには、自分の預貯金、車、時にはマイホームまで手放さなければならない可能性があります。
つまり、「仕事も私生活もすべて自分ひとりで責任を取る」──それが個人事業主の大きな特徴です。
無限責任のまとめ
- 事業とプライベートのお金は一体化
- 損害や借金もすべて個人で負担
- 自己資産をすべて失うリスクも
有限責任とは?|法人設立後の安心感
一方、株式会社や合同会社を設立すると、「有限責任」の立場になります。
これは、会社の借金や損失に対して、出資した金額の範囲でしか責任を負わないという考え方です。
たとえば:
- 銀行からの融資は「会社名義」で行われる
- 万が一返済できなくても、会社の財産から支払う
- 自分の家や貯金などの個人資産は原則守られる(※ただし保証人になると例外)
有限責任のまとめ
- 会社と個人のお金はきっちり分けられる
- 借金の責任は原則会社が負う
- 保証人になった場合は個人リスクも
実際のケースで比べてみよう
ケース1:個人事業主で大きな損失が発生
知人のAさんは、個人事業主として飲食店を開業しました。順調な滑り出しでしたが、原材料費の高騰や台風による設備被害で、半年後には数百万円の赤字に。
銀行から借りた資金の返済ができず、結果的に自宅を売ることになってしまいました。
ケース2:法人として設立し、個人資産は守られた
一方、Bさんは株式会社を設立して同じような飲食業を開始しました。コロナの影響で売上は落ち込みましたが、会社としての損失は法人の中で処理され、Bさんの個人資産には影響がありませんでした。
設立方法の違いも知っておこう
- 個人事業主になるには:税務署に開業届を出すだけ。費用も少なく手軽にスタートできます。
- 法人を設立するには:定款作成や登記など、手続きが多く費用もかかりますが、その分「信用」がついてきます。
法人にすることで、社会的な信頼度や金融機関・取引先からの評価も上がりやすくなります。
比較表で違いをチェック
項目 | 個人事業主(無限責任) | 会社設立(有限責任) |
---|---|---|
責任の範囲 | すべての個人資産 | 出資額の範囲(※保証人除く) |
借金の扱い | 自分の借金として返済 | 原則は会社が返済 |
設立のしやすさ | 簡単・費用も少なめ | 手続きが必要・費用がかかる |
信用・取引のしやすさ | やや不利 | 社会的信用が高い |
最後に|“自分に合った形”をじっくり選ぼう
「まずは気軽に始めてみたい」なら個人事業主、
「将来的にリスクを減らし、長く続けたい」なら法人設立という選択肢も考えてみましょう。
どちらを選ぶかは、あなたのビジネスの方向性や価値観によって変わってきます。焦らず、じっくりと考えてみてくださいね。
迷ったときは、一人で抱え込まずに経験者や専門家に相談してみましょう。
あなたに合った形を一緒に見つけていきましょう。