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建設業法2024年改正のポイント|経営者が押さえておくべき内容とは?
2024年6月、建設業法が改正されました。
今回の見直しは、現場の実情を踏まえた内容となっており、特に事業者や元請企業にとっても無関係ではありません。主なポイントは、「適正な賃金の確保」「無理のない工期設定」「資材価格高騰時の対応強化」といった、現場の働き方や契約実務に直結する内容です。
ここでは、経営者・事業主の方に向けて、要点をわかりやすくまとめています。
1. 適正な賃金確保が義務に近づく
これまで「安すぎる契約」により、下請業者や従業員の賃金が圧迫されるケースが後を絶ちませんでした。その対策として以下が導入されています。
- 標準労務費の設定 国が職種ごとに「最低限支払うべき金額」の基準(標準労務費)を設け、著しく低い契約金額には是正指導が行われる可能性があります。
- 不当なダンピングの禁止 材料費や人件費を下回るような金額での受注は、元請側にも責任が及ぶ可能性があります。見積・契約時点でのチェックが重要です。
2. 無理な工期設定はリスクに直結
「この日までに完成させてほしい」という発注側の意向で、タイトなスケジュールになることもありますが、今回の改正では明確に以下のような措置が講じられています。
- 不当な短工期契約の排除 技術的に不可能または過度な負担となる工期を設定することは、今後問題視される可能性が高まります。
- ICTの活用促進 電子化や遠隔管理の導入が推奨されています。現場写真の共有や報告書のデジタル提出によって、管理コストの削減にもつながります。
- 技術者の常駐要件の合理化 現場に毎日常駐しなくても、条件を満たせば遠隔監視で対応できるようになりました。技術者のリソースを有効に使えるようになります。
3. 資材価格の高騰時には契約見直しを
昨今の原材料価格の上昇により、契約後に採算が大きく崩れるケースが増えています。そのため、以下のような対応が制度化されました。
- 事前協議が義務化の方向へ 資材費が変動する可能性がある場合は、発注者と受注者の間で事前にその旨を共有し、金額調整の余地を持たせることが重要です。
- 契約変更への柔軟な対応 契約後に資材費が高騰した場合、受注者側からの契約変更要請を発注者が誠実に検討することが求められます。契約書に価格変動条項を盛り込むのも一つの手です。
改正によって期待される効果
- 現場の賃金水準の適正化
- 安全かつ無理のない工期設定の普及
- 資材高騰リスクへの備え
- 若手の人材確保・業界イメージの改善
まとめ|経営判断に関わる改正ポイント
今回の建設業法改正は、単なる「現場のルール」ではなく、契約・見積・人材確保に直結する要素が多く含まれています。
「うちはまだ大丈夫」と思っていても、実務上は確実に影響してきます。これを機に、自社の契約書の見直しや、見積もり段階での確認体制強化を進めることをおすすめします。
※この記事は2024年6月時点の改正内容に基づいています。最新の運用指針は、国土交通省・各都道府県の発表をご確認ください。