「無料のAI」は、いつまで無料なのか──行政書士が考える、AIとの付き合い方
最近、仕事の下調べでも、文章を整えるときでも、AIを毎日のように使っている。月に一円も払わずに、これだけのことをやってくれる。正直、便利すぎて少し怖いくらいだ。
便利すぎて、ふと思うことがある。これ、いつまで無料なんだろう。
今回は、あるニュースをきっかけに考えた「AIとの付き合い方」について書いてみたい。AIを仕事に使い始めた中小企業の方や、個人事業主の方の参考になればと思う。
月に一円も払わず、AIを毎日使っている
ChatGPTやClaude、Geminiといった生成AIを、無料のまま使っている人は多いと思う。私もその一人だ。書類のたたき台を作る、長い文章を要約する、調べ物の入り口にする——気づけば、毎日のように頼っている。
これだけのことを、無料でやってくれる。ありがたい一方で、どこか落ち着かない。タダより高いものはない、という言葉が、頭の片隅にずっとある。
きっかけは、GoogleのAI人材が次々と抜けたニュース
そんなとき、目に留まったニュースがあった。GoogleのAI開発を支えてきた中心メンバーが、相次いでライバル企業に移っていったという話だ。
Gemini(GoogleのAI)を作ってきた研究者や、ノーベル賞を受けた科学者までもが、ChatGPTを手がけるOpenAIや、Claudeを手がけるAnthropicへと移籍した。AIの世界では、こうした「頭脳の奪い合い」がいま激しく起きている。
ニュースとしては地味に見えるかもしれない。でも、その裏側を知ると、私たちユーザーにも関わる話だと気づく。
なぜ、上場前の会社に人が集まるのか
なぜ、安定した大企業のGoogleから、人が抜けていくのか。
引き抜いた側の2社は、これから株式上場を控えている。上場する前のいま入社すれば、将来その株が大きな価値になるかもしれない。つまり「これから跳ねそうな会社に、今のうちに乗っておく」人たちが動いているのだ。
決め手は、給料の多さではない。未来への期待に、お金と人材が集まっている。それくらい、AIの分野には「これから伸びる」という熱がある、ということだ。
AIの勝負は、まだ何も決まっていない
この一件から見えてくるのは、AIの勝負はまだ何も決まっていない、ということだ。
どの会社が最後に勝つのか、いまの時点では誰にも分からない。だからこそ各社は、優秀な人材にも、巨大なコンピューター設備にも、今この瞬間、ものすごい金額を投じている。負けられない競争の真っ最中なのだ。
そして、使ったお金は、いつか回収しなければならない。これは、どんな商売でも同じだ。
「便利で無料」が、ずっと続くとは限らない
私たちが今「無料」や「格安」でAIを使えているのは、各社がシェアを取り合っている、いわば大盤振る舞いの時期だからだと思う。まずは多くの人に使ってもらい、自社のサービスに慣れてもらう。そのための先行投資として、無料で開放している面がある。
だとすれば、競争が一段落したあとはどうなるか。料金が上がる、無料で使える範囲が狭まる、これまで無料だった機能が有料に移る——そうした変化は、十分にありうる。実際、いくつかのツールでは、すでに課金の仕組みが見直され始めている。
「ずっと無料で使えるもの」として業務に組み込んでしまうと、いざ有料化されたとき、慌てることになる。
行政書士が一つだけ気をつけていること
では、どうすればいいのか。
先に言っておくと、不安をあおりたいわけではない。AIは、使った方がいい。使わないという選択は、正直もったいないと思う。
ただ、行政書士として日々AIを使うなかで、一つだけ気をつけていることがある。それは、一つのAIに、すべてを預けないことだ。
理由は、許認可や経営のご相談に乗っていて感じることと似ている。一つの取引先、一つの収入源に頼り切っていると、そこが揺れたとき、事業ごと揺れてしまう。AIも同じで、特定のツール一つに業務を全部組み込んでしまうと、そのツールの料金や方針が変わったとき、こちらに逃げ場がなくなる。
具体的に意識している、3つのこと
抽象的な話だけでは動きにくいので、私が実際に意識していることを3つ挙げておきたい。どれも、今日から始められることばかりだ。
1. 複数のAIを、場面で使い分ける
文章を整えるならこっち、調べ物ならこっち、というように、最低でも二つは触っておく。普段から両方に慣れておけば、片方が値上げされても、もう片方にすぐ移れる。「乗り換えられる状態」を保っておくこと自体が、リスクへの備えになる。
2. 自分の「使い方」は、手元に残す
よく使う指示の出し方や、業務の進め方の型は、メモやファイルにして自分で持っておく。たとえば「この書類をチェックするときは、いつもこう頼む」という文章を、自分の手元にストックしておくイメージだ。
これさえあれば、どのAIに乗り換えても、すぐに同じように使える。便利な機能を、特定のツールの中に閉じ込めないための保険になる。
3. お金をかけるなら、「道具」より「使い方」に
最新のAIを次々と追いかけることに、時間を使いすぎない方がいいと思う。それよりも、自分の仕事のどこにAIを差し込むと一番効くのか——その設計に時間をかけたい。
道具は、これからも次々と入れ替わっていく。けれど、自分の仕事に合った「使い方の知恵」は、道具が変わっても残り続ける。投資するなら、消えない方にしたい。
それでも、AIは使った方がいい
ここまで注意点を書いてきたが、結論はシンプルだ。AIは、怖がらずに使った方がいい。
無料のうちにしっかり慣れて、自分の仕事のどこで役に立つかを見つけておく。そのうえで、一つに依存しないよう、少しだけ分散させておく。たったそれだけで、これから先に料金や方針が変わっても、慌てずに済む。
備えがあるかどうかで、変化が「ピンチ」になるか「ただの切り替え」で済むかが変わってくる。
まとめ:頼り先を、一つにしない
AIのニュースは、毎日のように流れてくる。どの会社が新しいモデルを出した、どこが何兆円を調達した——正直、全部は追えないし、追う必要もないと思う。
それでも、今回のニュースから読み取れることは、はっきりしている。AIの世界は、まだ勝者が決まっていない。だから、今の「便利で無料」が、ずっと続く保証はない。
制度も、取引先も、そしてAIも。「頼り先を、一つにしない」。これは、事業を長く続けるための、昔から変わらないコツなのかもしれない。
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