「AIを使えます」だけでは評価されない。ホンダとファミマに見る新しい評価軸

会社の中でのAI活用が、社員一人ひとりの自由な工夫だけでなく、人材育成や評価、処遇に関わる仕組みへと広がりつつあります。ホンダとファミリーマートの取り組みを例に、「AIを使ったかどうか」ではなく「AIを使って何を改善したか」が問われる流れを見ていきます。中小企業や個人事業主にも応用できる考え方です。

なぜAI活用が人事の話にまで広がっているのか

生成AI(文章や画像などを新しく作り出せるAIのこと)が会社に広まる中で、「使える人と使えない人の差」が、そのまま仕事の質やスピードの差になり始めています。そこで会社は、AIを使いこなせる人をどう見つけ、どう評価し、どう配置するかという課題に向き合うようになってきました。

ホンダ:AIのスキルを認定して、必要な仕事に配置する仕組み

ホンダは2024年6月に「Gen-AIエキスパート制度」を始めました。社内の生成AI人材を、スキルレベルに応じて3段階で認定する制度で、年3回、筆記試験や面接を通じて認定が行われます。

認定された人は、社内の生成AIに関わるプロジェクトに、専任または兼務という形で配置されます。ポイントは、これまで各部署にバラバラに埋もれていたAIスキルを見える化して、必要としている部門と結びつけている点です。最上位のレベルでは、AIのシステムを作れるだけでなく、事業の展開や戦略まで描ける人材が想定されています。

この取り組みは「日本の人事部 HRアワード2025」の企業人事部門で最優秀賞を受賞していて、社内の技術コミュニティから生まれた仕組みが、会社全体の人事の取り組みへと発展した例として注目されています。

ファミリーマート:業務削減の実績を評価指標にする考え方

ファミリーマートは2024年、生成AIを活用して、関連する業務時間を50%削減する目標を発表し、会社をまたいだ生成AIプロジェクトを立ち上げました。文書作成や要約、Q&A対応、翻訳、法令やリスクの洗い出しといった業務での活用が検討されています。

あわせて、AIを使った業務削減の事例を競う社内コンクールを行う方針や、生成AIによる効率化の実績を社員の評価指標に組み込む方針も、公式に発表しています。

単にAIを使う回数が多ければ評価されるわけではない

2社に共通しているのは、「AIを使ったこと」自体を評価しているのではなく、AIを使った結果としての成果を評価している点です。評価されるのは、作業時間の削減、仕事の質の向上、ミスの減少、売上への貢献といった、目に見える変化です。ホンダの制度も、認定はあくまでスキルの入り口であり、実際のプロジェクトでの成果につなげることが前提になっています。

中小企業や個人事業でも取り入れられる考え方

大きな会社のような人事制度を、ゼロから作る必要はありません。次のような簡単な記録から始めるだけでも、AI活用の成果を確認できます。

  • 作業時間が何分短くなったか
  • 同じ時間で何件処理できるようになったか
  • 文章や資料の修正回数が減ったか
  • お客さんへの返信が早くなったか

こうした小さな変化を積み重ねて記録しておくと、AIを使うことが実際にどれだけ役立っているか、自分自身でも把握しやすくなります。

気をつけたいこと

AIを使えない人を一律に低く評価してしまうと、仕事の性質上AIが使いにくい業務をしている人が、不当に評価されてしまう恐れがあります。評価の軸は、あくまで「仕事の改善につながった成果」であって、「AIを使っているかどうか」そのものではない、という点を意識しておく必要があります。

また、AI活用を広げていく際には、情報漏えいや、AIの誤った回答への対応、著作権への配慮など、社内のルール整備もあわせて必要になります。人事評価制度や労務管理の仕組みを具体的に整えていく場合には、社会保険労務士など、その分野の専門家と連携しながら進めるのが安心です。

まとめ

「AIを使えます」と言うだけの時代から、「AIを使って何を改善したか」を示す時代へと変わりつつあります。難しい制度を作らなくても、日々の作業でどれだけ時間や手間が減ったかを記録するところから始められます。AIを安全に使い、仕事の改善につなげられる人の価値が、これから少しずつ高まっていきそうです。

ホンダ公式(HRアワード2025最優秀賞受賞発表) 

ファミリーマート公式ニュースリリース

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