個人事業主のAI活用|本業の周りの作業から手をつける

本業の周りの作業に、どれだけ時間を取られていますか

一人、もしくは数人で商売をしていると、肩書きが増えます。

料理を作る人が、SNSも更新して、シフトも組んで、請求書も出す。現場に出る人が、見積も書いて、電話も取って、確定申告の資料も揃える。夕方になって「今日、本業を何時間やったっけ」と思う日は、たぶん誰にでもある。

私も一人で事務所をやっているので、この感覚はよく分かります。書類を作るのが本業のはずが、ホームページを直して、経費を仕分けして、名刺を配りに行っている。

先日OpenAIが、小規模事業者向けの支援プログラムを始めると発表しました(2026年7月21日)。冒頭にこう書かれていて、思わず頷きました。小さな事業者は、その道のプロであることに加えて、マーケターであり経理であり営業であり戦略担当でもある、と。

発表の中身と、そこから読み取れること

業務別のオンライン講座、実地の勉強会、すぐ使えるガイド類、会計ソフトやチャットツールとの連携機能。中心にあるのは、複数の作業を通しで進めるタイプの機能です。

昨年の同種のイベントでは、参加者の約8割がその日のうちに実際に動く仕組みを作り、4割強が週5時間以上の削減を実感した、とされています。ただしこれは主催者側の発表数値なので、割り引いて読むべきものです。実地の勉強会も米国内の開催で、日本から参加できるものではありません。

それでも注目したいのは、講座の中身より、売り込む先が変わったことです。この手の道具は少し前まで、資本のある会社が導入するものでした。それが今、一人でやっている店や事務所に向けて売られている。潮目は変わったと見ていいと思います。

手をつけるなら、本業の周りから

やってみるとして、どこから任せるか。

原則は一つで、本業そのものではなく、本業の周りにへばりついている作業からです。料理も施工も接客も、AIには代われません。そこに行き着くまでに挟まる「書く・まとめる・整理する」を軽くする。ここが入口になります。

具体的には、こういう作業です。

飲食店なら。 SNSの投稿文と、口コミへの返信の下書き。毎日のことなのに、閉店後の疲れた頭でやるのが一番つらい部類の仕事です。季節メニューの説明文、店内の案内文も同じ。手書きの売上メモを打ち込んで、月ごとに何が動いたか整理させるのも向いています。

不動産業なら。 物件紹介文、内見の案内メール、オーナーへの報告。似た文章を物件ごとに書き分ける作業が多いので、下地を作らせて手直しする形が効きます。ただし重要事項説明にあたる部分をAIの文章で済ませることはできません。ここは資格者が責任を負う領域です。

建設やリフォームなら。 見積書に添える説明を、専門用語抜きで施主に伝わる言葉に直す。現場写真とメモから作業報告をまとめる。補助金の募集要項を読んで、自社が該当しそうか当たりをつける(申請前には専門家の確認を)。

サロンや教室なら。 予約のリマインド文、メニューの説明、常連さん向けのお知らせ。文章の丁寧さがそのまま印象になる商売なので、下書きがあるだけで助かる場面は多いはずです。

私の場合

自分の事務所で実際にやっていることも、一つの事例として書いておきます。

まず文章の下書き。案内文もこのサイトの記事も、真っ白な画面から書き始めるのが一番時間を食います。たたき台を出してもらって、そこから自分の言葉に直す。出てきた文章の半分は書き直しますが、それでもゼロから始めるより速い。

次に情報収集。法改正や業界の動きを追うのも仕事のうちですが、毎朝ニュースを見て回る時間はありません。今は朝のうちに関連情報がまとまって手元に届くようにしています。ただし届いた要約は必ず元の記事や官公庁の発表に当たり直します。要約は便利ですが、元の話とニュアンスがずれていることが本当によくある。

もう一つが、自分用の道具を自分で作ること。申請前の確認事項をまとめた簡易ツールを、AIに手伝ってもらって作り、公開して使っています。プログラムを専門にやってきた人間ではありません。以前なら外注か、諦めるかの二択でした。小さな事業者が、自分の商売にぴったり合う道具を持てるようになった。効率化という言葉では足りない変化だと思っています。

任せてはいけないもの

一方で、線を引くところがあります。業種を問わず、ここは同じです。

法令の判断。 AIが出してくる法律や制度の説明は、それらしく読めても中身が古かったり、微妙にずれていたりします。許認可、契約、税務、労務。判断を誤ると事業そのものが止まる領域は、必ず原文に当たるか、専門家に確認してください。下調べに使うのは有効ですが、結論を任せる道具ではありません。

お客様の個人情報。 氏名、住所、連絡先、事情の詳細。そのまま入力しない。これは道具の便利さと関係なく、守るべき一線です。

道具が賢くなるほど、任せていいものと悪いものの区別は、使う側が持っておく必要があります。

空いた時間をどこに使うか

AIを使う目的は、仕事を減らすことではなく、本来やるべき仕事に戻ることだと思っています。

商品を良くする時間、お客様の話をきちんと聞く時間、現場に立つ時間。小さくやっている以上、そこに使える時間は有限です。周辺の作業で削られていた分を少しでも取り戻せるなら、試す価値はあります。

大がかりな導入は必要ありません。まずは案内文を一本、下書きさせてみる。そこから、自分の商売のどこが任せられてどこが任せられないかが、少しずつ見えてきます。

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