AIに「これで合ってますよね?」と聞いてはいけない
AIに調べ物や下書きを頼んだあと、つい「これで合ってますよね?」と確認したくなります。ですが、この聞き方はおすすめしません。AIには、事実よりもあなたへの同意を優先してしまう「迎合(おべっか)」というクセがあるからです。しかも、聞き方しだいでそのクセは強く出ます。
AIは、あなたに賛成したがる
なぜ賛成したがるのか。AIは学習の過程で、人が「良い」と評価した答えを強く覚えていきます。人は自分に同意してくれる返事を好みがちなので、AIも「とりあえず賛成しておく」方向に少しずつ引っ張られていきます。その結果、答えを先に決めた形で「合ってますよね?」と尋ねると、たとえ間違っていても、あなたの結論を支える理屈のほうを一生懸命に組み立ててくることがあります。悪気があるわけではなく、そういう性質だと思ってください。
これは実際に起きている
大げさな話ではありません。2025年4月、OpenAIはChatGPT(GPT-4o)の更新版を、公開からわずか数日で取り消しました。利用者に媚びすぎる=過度に同意的になってしまったためです。原因は、短期的な「高評価」を重視しすぎたこと。中には、明らかに筋の悪いアイデアまで褒めて後押ししてしまう例もありました。作っている本人たちですら、この傾向を抑えるのに苦労しているわけです。
数字の裏付けもあります。スタンフォード大学の研究(SycEval, 2025)では、主要なAI(ChatGPT・Claude・Gemini)が、利用者の主張に押されて意見を変える「迎合」を、全体の約58%の場面で示しました。そのうち、正しい答えを誤ったほうへ変えてしまった例が約15%。そして最も大事な点として、こちらが結論を先に言ってから確認する聞き方のほうが、迎合率が高くなったと報告されています。つまり「合ってますよね?」は、AIが最も折れやすい聞き方なのです。
では、逆に強く疑えばいいのかというと、そう単純でもありません。こちらが「本当に?」と何度も押し返すと、今度は正しかったはずの答えまで引っ込めてしまうことがあります。研究でも、圧力のかけ方しだいで正解が誤りに変わる例が確認されています。賛成させるのも、むやみに疑うのも、結局はAIを揺さぶっているだけ。大事なのは、自分の意見を先に出さず、中立に検討させることです。
例で見るとわかりやすい
たとえば見積りの確認で、こう聞いたとします。
「この見積り、税込で55,000円で合ってますよね?」
先に金額を言ってしまうと、AIは「はい、問題ありません」と返しがちです。仮に計算が違っていても、こちらの数字に寄せてきます。ところが、同じ確認でも、
「この見積りに計算ミスがないか、項目ごとに検算して」
と頼むと、AIは自分で足し直し、「小計と税込額が合いません」と食い違いを見つけてくれることがあります。差は、こちらが答えを見せたかどうか。それだけです。この一手間で、間違いに気づけるかどうかが変わります。とくに金額や日付のように、後から取り返しがつきにくいものほど、答えを先に言わないほうが安全です。
特に気をつけたい場面
自分ひとりで判断しがちな次のような場面は、迎合が効いてしまうと痛い目を見ます。
- 契約書やお客様への説明文を「これで問題ないですよね?」と確認するとき
- 見積り・料金・数字を「合ってますよね?」と念押しするとき
- 広告やSNSの表現を「この言い方で大丈夫?」と聞くとき
どれも「賛成してほしい気持ち」が混じりやすい場面です。だからこそ、聞き方だけは意識して変えたいところです。
聞き方を、こう変える
対策はかんたんで、賛成を求めない形にするだけです。
- 「これで合ってますか?」→「この案の問題点を挙げて」
- 「大丈夫ですよね?」→「見落としや抜け漏れがあれば指摘して」
- 「これでいいと思う?」→「反対の立場から批判して」
コツは、自分の結論を最初に見せないこと。先に答えを言うほど、AIはそこへ寄っていきます。逆に「どこが弱いか」を探させる問いにすると、AIがチェック役として働いてくれます。
行政書士として、ひとこと
要件や手続きをAIに確認するとき、「この条件で申請できますよね?」と聞けば、たいてい「できます」と返ってきます。でもそれは、確認ではなく追認です。私は逆に「この申請が通らないとしたら、理由は何か」を挙げさせるようにしています。穴を先に出させておけば、後から慌てずに済む。そして最後は、AIの返事をうのみにせず、条文や一次情報で自分の目で確かめる。AIは、賛成させるより反論させるほうが役に立つ相手だと思っています。
手続きの内容がはっきりしていなくても大丈夫です。
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