AIは最新の法改正を知らない|「知識の締め切り日」を知らないと危ない
制度や手続きの要件をAIに聞くと、すらすら答えてくれます。便利ですが、うのみにするのは危険です。AIの知識には「締め切り日」があり、その後に起きた法改正や通達を、そもそも知らないことがあるからです。しかも困ったことに、知らないときほど、それらしく言い切ってきます。
AIには「知識の締め切り日」がある
AIは、ある時点までに集めた文章で学習しています。この締め切り(知識カットオフ)より後のことは、原理的に知りません。やっかいなのは、知らないときに「分かりません」と言うとは限らないこと。多くの場合、古い情報を「現行のもの」として、自信たっぷりに答えてしまいます。
しかも、この締め切りは思ったより古いことがあります。学習の締め切りから一般公開までは半年〜1年ほど遅れるのが普通で、出たての新しいモデルですら、すでに数か月前の世界を見ているわけです。さらに、使っているサービスやプラン、モデルによって知識の新しさは変わります。「最新のAIだから最新の情報を知っている」とは限らない、と考えておくのが安全です。
だから、法改正・制度変更にとても弱い
法律や税制、許認可の要件、補助金の条件、申請様式は、しょっちゅう変わります。ところがAIは、改正前の税率や古い要件、廃止された様式を「今もこうです」と答えてしまうことがあります。個人事業主にとっては、これが地味に効きます。確定申告の扱い、補助金の要件、届出の期限、古い情報のまま動くと、後で「実は変わっていました」となりかねません。
たとえば「インボイスの登録は今どうなっている?」「この補助金の締め切りは?」と聞けば、AIは具体的な数字や日付つきで、もっともらしく答えます。中身がはっきりしているぶん、つい信じてしまう。ですが、それが半年前・一年前の状態ということは珍しくありません。「答えられた」ことと「今も正しい」ことは、別だと考えてください。
特に気をつけたい場面
次のような、変化が速く、間違えると影響が大きいテーマは要注意です。
- 税率・控除・インボイスなど、税まわりの取り扱い
- 補助金・助成金の要件や締め切り
- 許認可の要件、必要書類、申請様式
- ここ数か月で施行された改正がからむ相談
「検索モード」も万能ではない
最近のAIには、その場でウェブを検索して最新情報を拾う機能もあります。ただ、拾ってきた情報と、もともと覚えている知識は別物で、拾い方しだいで精度は落ちます。検索させたからといって安心せず、示された根拠のページを自分で開いて確かめるところまでが一つの作業だと考えてください。検索で拾った内容と、AIがもともと覚えている知識が食い違うと、どちらを優先するかで答えがぶれることもあります。だからこそ、頼るのはAIの結論ではなく、その先の一次情報です。
使うときのコツ
- 税率・要件・様式・期限は、AIの答えを出発点にとどめ、必ず官公庁の一次情報で裏を取る
- 「これはいつ時点の情報?」と尋ねる。最新が必要なら検索させる
- 改正の有無だけでなく、施行日まで確認する
聞き方をひと工夫するだけでも精度は上がります。たとえば「この情報はいつ時点のものか併記して」「◯◯省の最新情報を検索して、根拠のURLも示して」と添えるだけで、古い情報をそのまま出される事故は減らせます。
要は、AIには「たたき台」を作らせ、「現行かどうか」の判断は自分でする、という役割分担です。
ちなみに、「知らないから間違える」のと、「知っているはずなのに事実をでっち上げる」のは別の現象です(後者はいわゆるハルシネーション)。前者は最新を検索させれば直りますが、後者は情報を与えても起こり得ます。どちらにしても、最後に一次情報で確かめる習慣さえあれば、まとめて防げます。
行政書士として、ひとこと
私も要件をAIに聞くことはありますが、返ってきた内容は「AIの知識時点の話」と割り切って、最後はe-Govや所管省庁のサイトで、現行の条文と施行日を必ず確認します。たとえばAIに聞いた要件をそのまま信じて書類を整えたら、様式や添付書類が新しくなっていた——というのは、じゅうぶん起こり得る話です。古い情報のまま申請すれば、差し戻しや不利益は結局お客様に及びます。AIと引き換えにしていいのはスピードだけで、正確さまで手放してはいけない。ここは、便利になっても変わらない一線だと思っています。
手続きの内容がはっきりしていなくても大丈夫です。
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参考
- e-Gov法令検索(現行法令・未施行法令を一次情報で確認できる/総務省)
- 国税庁「法令等」(税法・通達の確認)
- 各AI提供元のモデル仕様に、モデルごとの知識カットオフが記載されています(例:OpenAI、Anthropic のモデルドキュメント)
